バスのこれからを考える−−暮らしの中で、移動を諦めなくてもいい社会へ

多摩市でも、ミニバスの減便やルート変更など、公共交通をめぐる課題が深刻になってきています。
その背景には、さまざまな業界に共通する人材不足、とりわけバスの運転手不足があります。こうした状況の中で、私たちにできることは何なのか。考える機会にしたいと思い、10月10日パルテノン多摩で開かれた「バスとまち」の企画の一つである講演会に、岩崎市議、岸田市議とともに参加しました。
講師は、交通ジャーナリストの鈴木文彦さん。テーマは「多摩地域のバスの歩みと路線バスの今」です。
子どもの頃から乗り物が好きだったという鈴木さんが、ご自身で撮影された貴重なバスの写真なども交えながら、多摩地域の公共交通がどのような歴史をたどってきたのかをお話しくださいました。
前半のお話が盛り上がり、限られた時間ではありましたが、これからのバスや公共交通が直面する課題についても、鈴木さんの見解を伺うことができました。
自動運転バスは解決策になるのか?
多摩市でも、自動運転バスの実証運行が段階的に進められています。運転手不足への対応策として期待される自動運転ですが、実用化にはまだ多くの課題があるようです。
鈴木さんは、日本で自動運転を実現するには、非常に高い安全性が求められることを指摘されていました。そのハードルを考えると、広く普及するまでには、まだ数十年単位の時間がかかる可能性があるとのことです。
また、過疎地域であれば自動運転バスを導入しやすいのではないか、という考え方もあります。しかし、現時点では運行コストが高く、過疎地域で採算を確保できるのかという問題もあります。
さらに、自動運転車と人が運転する車が混在する環境で、どう安全性を確保するのかという課題もあります。
例えば、自動運転バスが右折しようとして対向車を待っているとき、対向車の運転手がジェスチャーで「どうぞ」と合図を送ったらどうなるでしょうか。
交通ルールに明文化されていない、人間同士のちょっとした意思疎通に、自動運転車がどう対応するのか。こうした具体的な場面を考えると、技術を導入するだけでは解決できない問題があることがわかります。
これからの移動手段を、社会全体で考える
一方、山梨県で実施された、将来の車の運転に対する不安についてのアンケートでは、多くの人が不安を感じているという結果が出ていることも紹介されました。
高齢化が進む中で、自分で車を運転できなくなった後の移動手段を必要とする人は、今後ますます増えていくと考えられます。つまり、公共交通へのニーズは高まっていく一方で、運転手不足などにより、サービスを拡充することは容易ではありません。
もはや、お金を積めば解決できるという問題でもない。だからこそ、一人ひとりがこの課題を自分ごととして考え、地域や交通事業者など、さまざまな主体が連携して解決策を探っていく必要がある、というお話が印象に残りました。

本当に、簡単な解決策が見つからない公共交通の課題。だからこそ、バスという形にとらわれず、幅広い視点から考えていく必要があるのかもしれません。
バス以外の移動手段を組み合わせることはできないか。地域の中で移動を支え合う仕組みをつくることはできないか。ご近所同士のつながりや地域の力を生かすことはできないか。
さまざまな可能性を探りながら、地域の実情に合った方法を考えていくことが大切だと感じました。
移動は、通院や買い物、仕事、学び、人との交流など、日々の暮らしを支える大切な基盤です。
年齢や住んでいる場所にかかわらず、誰もが安心して移動できること。そして、移動手段がないために、行きたい場所に行くことや、やりたいことを諦めなくてもいいこと。
これからも、暮らしの中で移動を諦めなくてもいい社会をつくるために、何ができるのかを考えていきたいと思います。
